Saturday, May 22, 2010

幸せの経済学、パート2

バーナンキスピーチの続きです。

さて、経済学が個人の幸せにどういう風に関わってくるかということが、狭い視野だけではなく分かってもらえただろうか?しかし、結局のところ、長期的に私たちを幸せにしてくれるものってなんなんだろうか、私たちが呼ぶ「幸せ」というものと、長期的な「人生に対する満足感」というのはどうかかわってくるのか?それは、内面をみてみると答えがある。社会科学者は、たくさんの人に質問をすることで、答えを得ようとした。現在は、「Economics of Happiness」という勉強の専門分野まである。これは、世界における人々の幸せを考える事で、経済や社会的要素、個人の性格や行動などを分析する事で、どんなことが「幸せ」に結びつくのかを学ぼうとする分野である。

この勉強の結果は非常に興味深いもので、一つは、個々それぞれ大変な事が人生である人もいるだろうが、殆どの人が自らを適度に幸せである、と考えている事だ。「総合的に見て、あなたは現在かなり幸せ、とても幸せ、そんなに幸せではない、のどれに当てはまりますか?」という質問には、9割の米国の人がかなり幸せ、とても幸せと答えたと言う。もしかしたら、そういう調査をされて「幸せではない」とはいいにくいのかもしれないが、リサーチャーは人間には非常に高い適応能力がありどんな難しい環境でも何かしら満足できることを見つける能力が元からあるようにできているのだという。

又別の研究では、収入と幸せについてが言及されている。数年前に、経済学者のRichard Easterlinが調べた結果では、どの国でもお金持ちの人は、貧困にある人に比べると「幸せ」と答える人が多いと言う。しかし他に2つの経済的要因とはあまりうまく筋が通らないことがあった。一つは、国がより豊かになっても、人々の幸せ度が高くなるわけではないということ。たとえば、米国は豊かになり続けているが、人々は40年前と同じくらい幸せだということで、特に以前よりずっと、幸せになったという結果はでてこなかった。豊かな国の人の方が、断然に収入が低い国の人に比べて、究極に幸せであるということはない。この発見はEasterlin Paradoxとよばれる。

さて、この結果については未だに議論が続いているが、豊かになれば成る程、幸せ度が高くなるということはなさそうである。例えば、アメリカ人の人生の幸せ度は、収入が4分の1以下であるコストリカの人と同等という調査結果がある。今回は私は、お金持ちになることは、幸せや人生の満足度における貢献要素の一つにはなるが、幸せになるためには、他の要素がなくてはならない、という仮定でお話ししたい。

Easterlinの発見から何が他にいえるかというと、人々の幸せというのは、個人の絶対的な富ではなく、人と比べてどれぐらいお金があるかということに関係がある。例えば私が住んでいる国では、多くの人が1匹の牛しか持っていないところに、自分が3匹の牛をもっていたら、社会的なステータスもセルフ・エスティームも持て、幸せに感じるだろう。しかし、みんなが高級車を持っているような世の中だったら私は特別には感じることはないだろう。これが、同じ国では、金持ちの人の方が貧乏の人に比べて幸せ度が高いと言う回答が得られるが、金持ちの国の金持ちの層と、貧乏の国の金持ちの層の幸せ度があまり変わらないというのは、そういうことである。


金持ちというのは、相対的な言葉である。私が子供の時は、カラーテレビがあることはステータスの象徴だった、しかし現在は、みんなカラーテレビを、多くの場合1台以上所有している。あなたがどれだけお金持ちかということは、自分の期待や憧れなど、コミュニティによって形成されるところが大きい。

Easterlinのリサーチと解釈は、個人にもあてはめることができる。私たちは大学にいく目的の大きな一つとして、お給料の良い仕事につくことがあげられるだろう。そして、自分自身と家族の経済的な安定というのは、重要なゴールである。しかし、もしも仕事を決める時に、それが高給だからという理由だけならば、気をつけなければ成らない。大きな収入を得る事は、はじめは非常に興奮するが、しかしその人生の基準になれてしまい、同じような収入を得る仲間と過ごしていたら、その興奮はすぐにでも冷めてしまうだろう。大きな宝くじをあてても、そのあてた瞬間は大興奮しても、6ヶ月後はそれ以上の幸せは特に感じないという調査がある。お金だけではだめなのである。大体高給とりの仕事の場合は多くの場合家族との時間を犠牲にしたり、ストレスがたまる仕事だったりと色々なマイナス面もあったりするだろう。

前にも少し出て来た、人間の適応性だが、これは又Easterlin Paradoxを説明できる一つだ。お金持ちでも貧乏でも、人間は環境に慣れるということである。宝くじに当たった人が、金持ちになったことに慣れた時には、特に幸せを感じることがなくなってしまったように、卒業や仕事での昇進、などが幸せに繋がることがあっても、これらの一時の出来事は長期的な意味での幸せには繋がらないのは、その状況に「慣れて」しまうからである。

「お金だけじゃ幸せになれないわよ」と言われた事がある人はたくさん居ると思うが、それでは他にどんな事が人生の満足感につながるのだろうか?心理学者と経済学者は、これについて良い調査をおこなっている。


(長いなこのスピーチ、今日も疲れました、第3部へ続きます、、、)

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